静かに壊れていく秒針たちが

詩メインで、あとは徒然に音楽のことなど

人形の涙

さびしがりやの人魚の人形 忘れられることだけ怖がっている
永遠に取り憑かれた太陽と 閉ざし続ける闇 人形はそれを見てしまった


温もりが確かなものであればあるだけ 離れることが怖くなる
でも その恐怖から完全に逃れることができる人なんて そう多くはない
例外的に冷血な 特殊なタイプの数人に憧れを持とうとしても意味はない

無理にはしゃいで 一人になって数倍落ち込んで 泳げない自分を嘆く
身を投げる海さえ見当たらないし 綿の体では 中途半端に浮かぶだけ


歩く度の痛みと引き換えに足を手に入れた物語の人魚のように
等価交換で差し出すものを持っていないと人形は涙を流す
流す涙がそれにあたることに思い当たることもなく 自分は何もないと嘆く


さびしがりの人魚の人形 ビーズの瞳に世界は写し出されて
何色にも染まりたくはないけれど 触れてはみたいと真顔で言っている
一人がいいけど 構われたいし 放っておかれたら嫌だと造り笑顔

せめて涙は本物であることを その熱で思い出してくれればいい
人形の流す涙 人魚の形をした涙 一人の言葉 独りの痛みを
忘れるだけで 忘れられないことが大切だと気付けるはずなのに

海を見つけられない人魚の人形は ただ涙を 涙と認識できぬまま

涙を