静かに壊れていく秒針たちが

詩メインで、あとは徒然に音楽のことなど

人形の涙

さびしがりやの人魚の人形 忘れられることだけ怖がっている永遠に取り憑かれた太陽と 閉ざし続ける闇 人形はそれを見てしまった温もりが確かなものであればあるだけ 離れることが怖くなるでも その恐怖から完全に逃れることができる人なんて そう多くはない…

終わる物語を愛している

終わらない物語を欲しがっても 読み手の我々は必ず終わりを迎える それが幸福なものであれ残酷なものであれ 必ず終わりを迎える 始まりを記憶できないように 終わりもおそらくは記録できない 死んだ後にどんな形で再生されるかなんて 死んだことがないからわ…

灰と配当

灰と配当 許された終わり禁断という軽くて安価なレッテルの上で安定してバランスをとれていると勘違いしてみても 嘘の中に咲く蕾に恐れる時間抱えた頭の中の時計はチクタクチクタク瞳の中の瞳に見つめ返されると目を逸らす井戸の中の井戸乾いてもそこに手を…

往復書簡

とても幸福で けれど悲しみを含んだ往復書簡 足りないのは言葉ではなく きっと空気 無重力ではなく 分かち合えない空間 欲しがるから離れていく 知りながら欲しがる 距離 とても幸福で 少し哀しい 往復書簡

水たまりとボウフラ

黒い気持ちを売り物に 醜さはセールスポイント 幾らで売れるのか知ったことではないが 退屈を埋めるための誰かの悪意のエンターテイメント 吐き気すらしない 苦い顔で笑う 麝香 媚薬と液体の混合物 ゼリー 厭な匂いのする場所で それは淀む 諦めることにも飽…

あまりにも甘く

甘い曖昧 ペンネグラタンの材料を買いに彼女の家の近くまで 口実 あらゆる可能性の中から一番遠いものを選んでから 後悔への航海 どうせ何時かどうにもならなくなると くしゃみしながら 哀しい予感 それでもいいかと 彼女の家に向かう 行きたい場所はいつだ…

deadman

ニール・ヤングのリアリティ 苦い味を飲み干して感じるベターな虚ろさと 真夏のキャンドルライトで準備は万端で 祈りと呪いの中間地点で考えた結果としての悪意は 十二分に満たされているのに感じる虚ろさに溶けた 政治にも宗教にも自分にも興味がありません…

そっと見つけた

声を見つけたよ 欲しかった言葉ではないけれど ただ その笑顔の残像に焦がれて 幾つもの投げ出したい理由を ただひとつの投げ出さない理由が覆い尽くしている 声を見つけたよ 心のなかにある 奥のそのひとつ 関係性は不確かだけれど 確かなそのひとつの言葉 …

透明

透明を欲しがって色がついた 静脈と動脈の絡まり合う場所から 声を発するまでの遠い距離間に孤独を感じても ふらふらと歩き回れるだけの無駄なエネルギーは確保して どうにでもなれと思いながらどうにかなるかなんて期待して 自分には期待しないのに偶然に期…

Hallelujah Hameln

星の降らない月に果てた 子供たちの残骸に縋り付き涙する獏 夢を見ない 現実にも瞼を閉じた 人々の群れ レミングスかハーメルン 血の色も薄れて 花鳥風月 火口の誘い 熱帯夜の雨 気狂いピエロ 舞踏曲と鎮魂歌 月に焚かれた星々の記憶 それはきっと幽霊のよう…

微か

蝉か蜉蝣のように この想いが終わってしまったら 全てを終わらせるとしても怖くはない 物語は続いていく そこに確かに けれど微かな痕跡があるのだとすれば それは歴史 情感の果てに残る 微かな歴史

アスパラガスガラパゴス

世間体に栞を挟んで 一時保留 旅に出よう 適当な電車で何となく途中下車 薄汚れたイタリア料理屋の 伸び切ったラビオリの付け合わせにアスパラガス それだけが瑞々しく ぷちりと噛み切ると水分が浸透していった澱んだ河に水を流す 理屈を知らない子供の笑み…

ぬるさ

雨の日 ビール ため息とため息の間の息継ぎに紛れ込む静かな喜びは しとしと 狂ったような正確さで 僕の右から左までの空間に満ち始める ペインキラーの名前と 好きだった女の子の名前 並べて 覚えて それは紛れもない好奇心と追憶の混合物 流想 夢想家 幻想…

永訣の森

夜の鳥 風邪を引いた三日月が断面的に水面に映る頃 身を縮めて震えに耐える 鼓動の数だけ泣くように 震える体を自ら抱く 星が落ちた記録 その穴に隠した気持ち 覗くこともなく 干からびて忘れられていくだけで それが寂しいと星は嘆いた 夜の鳥はそれを聞く …

白日、白夜、海の月

遠くに星が見える そう思うのは星に住んでいるから ありふれたラフレシア 食べるために生きて 生きるために食べる 奪い合うために欲するなら この発心も発疹じみた病気 彼方を望む そう思うのはここが嫌いだから どこに居るのかわかっても居ないのに 凍土の…